永遠の至福と自己実現(Self-realization)(5)
ヨーガでは、瞑想中の意識状態をいくつかの段階に分けていますが、ラージャ・ヨーガ、アシュタンガ・ヨーガでは、瞑想中の意識状態をヨーガ修行の中における第五段階目のプラティヤーハーラ(感覚の制御)、第六段階目のダーラナ(集中)、第七段階目のディアーナ(瞑想)、第八段階目のサマーディ(至福を得ることができる超意識の状態)と順を追って深くなって行くことを示唆しています。
そして、瞑想中における最高の意識状態であるサマーディ(三昧)にも、その意識状態の深さによって、違う名称がつけられ、それぞれの特徴が説明されています。
その中でも、ニルヴィカルパ・サマーディ(無分別三昧)を、スワミ・シヴァナンダは、無智を照らす「光明」と表現されていますので、この「ニルヴィカルパ・サマーディ(無分別三昧)」について、もう少し理解を深めて行きましょう。
The Bliss of Samadhi(サマーディの至福)
ニルヴィカルパ・サマーディ(無分別三昧)は、最も高い価値のある実現である。
ニルヴィカルパ・サマーディ(無分別三昧)の間、実在は全体の中で直覚智される。
それは、絶対者との一体の経験である。
あなたは、静まった個の意識の代わりに、ブラフマンの超意識を持つ。
満たされた経験は、サマーディと呼ばれる。
それは惨めさからの自由であり、絶対的な至福である。
サマーディは、人格の全廃ではなく、人格の完成である。
最高の光明状態の中で、あなたは主体と客体の一体を感じる。
あなたは、他に何も見ないし、聞かないし、知らない。
智識が、ただ照らしているだけであり、その光明の後に、あなたに求められるものは、何もない。
知ることは、在ることである。
知ることと在ることは、分離していない。
チット(Chit:在る)とサット(Sat:意識)は一つのものであり、同じものなのだ。
絶対的な智識と絶対的な存在が覆っている時は、絶対的な至福もある。
自己実現の至福は、言葉では言い表すことはできない。
何も触れることができない静寂、掻き乱されることのない最高の平和、光や純粋な至福――これらは自己実現の一瞥である。
感覚的な喜びは、瞑想やサマーディの至福と比べたら、無に等しい。
感覚的な人生から立ち上がり、目覚め、あなたが純粋で不死であるアートマンであることを実現しなさい。
すべての存在の中にアートマンを見、不死と永遠の至福に到達しなさい。
魂であるアートマンについてすべてを聞き、アートマンを理解し、アートマンを熟考し、アートマンを瞑想し、アートマンを実現しなさい。
Tat Tvam Asi。あなたはそれである。
このことを悟り、自由になりなさい。
あなたに本性を悟らせないようにしているものは、何も無い。
自己実現とは、発明ではなく、単に真の自己の発見であり、人における真の自己を識ることであり、自覚である。
自己実現とは、何かを新たに達成することではない。
あなたは、アートマンや真の自己に到達したり、達成する必要はない。
あなたは、実際に、至高の自己であるアートマンなのだ。
ただ、あなたは、あなたの内なる目を開くだけでいいのだ。
ヴェーダンタの哲学は、個人に、人間の自由、栄光、尊厳を奮い起こさせる。
この自由の源、至福の根源を知り、自由になりなさい。
至福は、正に、本質的な性質である。
至福は、あなたの生得権である。
あなたは、永遠の至福の栄光ある相続者である。
今直ぐ、この瞬間にも、この至福を悟りなさい。
光り、平和、喜び、至福を、外側に求めるのではなく、内側に求めなさい。
解脱、或いは、救いは、天国にも、カイラス山(*註)にも、ない。
アートマンという真珠は、無尽蔵の至高の神聖なる宝であり、あなた自身の心の部屋の中の静寂という宝石箱にしまわれている。
あなた自身の主観であるハートの最中に、あなた自身の存在の深遠な部分の中に、真の実在を発見しなさい。
(*註:仏教(特にチベット仏教)、ボン教、ヒンドゥー教、ジャイナ教で聖地とされている)
(Bliss Divine by Swami Sivananda)
また、スワミ・シヴァナンダの著作である『プラーナヤーマの科学』の中で、スワミ・シヴァナンダは、ニルヴィカルパ・サマーディ(無分別三昧)について、「自我もなく、空間もない、無分別、自分をも客観視する第三者視座も消えて無い状態。クンダリニーがサハスラーラ・チャクラに達した時に得られるサマーディ」と説明されています。
ヨーガの世界では、私たちの心(意識)には、5つの状態があると言われています。
①ムダー・・・タマス(暗性)的な状態であり、苦しみを創造し、苦痛をもたらす傾向にあります。
この状態にあると、幸福を否定し、自分の苦痛を誰かのせいにします。
②クシプタ・・・ラジャス(活動優位)な状態で、心が乱れているが特徴で、私たちは欲望を満たすための行為によって喜びと苦悩を経験します。
その行為がネガティブな結果を生む可能性があると警告されても耳を貸さず、その行為の正当性を見つけ出して実行してしまいます。
恐怖心を抱き、貪欲で利己的になり、混乱し、快楽を求めて苦痛から逃れようとします。
③ヴィクシプタ・・・自分の内側に集中しようと苦闘している状態で、心の光を意識的に集めて集中する努力をして、ときには成功し、ときには失望します。
快楽を追い求めてはやめることを繰り返しながら、内側に向かいます。
外側に向かう思考の波をコントロールするのはかなりの努力を要しますが、成功すると多大な満足感が得られます。
④エカーグラタ・・・心がサットヴァ(善性優位)の状態であり、ひとつのものに集中した状態で、意識を集中するために苦労することはありません。
快楽の中にいるよりも、集中している状態の方が幸せであることに気づきます。
⑤ニローダ・・・これも心がサットヴァ(善性優位)の状態で、心理作用が停止し、究極の喜びを経験することができます。これが深く瞑想した状態です。
私たちに馴染みが深いのは、①ムダーか②クシプタである、と言われています。
(参考:スワミ・シヴァナンダの瞑想をきわめる)
ニルヴィカルパ・サマーディ(無分別三昧)とは、心がニローダの状態であり、そして、この心がニローダであるニルヴィカルパ・サマーディ(無分別三昧)は、クンダリニーの目覚めと密接な関係があるということになります。
次回に続きます。
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