チャクラについて(18)ーアジナー・チャクラ(第6チャクラ) 脳のゆらぎ
前回からのテーマである「自由」について、「私たちに自由(意志)はあるのか?」という哲学やスピリチュアルの分野でも、時々論じられるテーマについて、
脳科学の最先端の研究成果から、驚きと衝撃の結果をご紹介しています。
脳の働きから見て、私たち人間に、果たして「自由」はあるのでしょうか?
続きを見ていきましょう。
『さて、これまでの話題を前提として、ここから「自由」の話題の核心に入って行くよ。
まず、この論文から紹介したい。
これは3か月前に発表された論文で、すごく衝撃的な内容だった。
ゴルフプレイヤーで行った実験だ。
グリーンの上でパッティングするでしょ。
パターでカップにボールを沈める。
でも、いかにプロ級の達人といえども外すことがあるよね。
つまり、成功するときと失敗するときがある。
たとえ、同じ場所、同じ距離、同じクラブと、すべてを同じ条件にして打ったとしても、なぜかうまくいくときと、いかないときがあるんだ。
それはなぜかという話。
あ、これはあくまで上級者の話ね。
初心者が外すのは。。。
→ 単に「下手くそ」だから。
でも100%成功するわけではないでしょ。
では、なぜ彼らは失敗するのだろか?
この論文によれば「プレイヤーの脳活動を観察していれば、パットが成功するか失敗するかを予測できる」という。
これはビックリだね。
さて、なぜそんなことが可能なのだろう。
→ 全然、わかりません。。。。
あはは、ちょっと理解に苦しむ研究だよね。
でも、たしかにパターの成績が事前に予測できてしまうんだ。
少し難度が高い質問だったかもしれない。
では、もっと簡単な実験を例にとって解説しよう。
半年ぐらい前に発表された科学論文だ。
ここでは「ランプが点灯したら、できるだけ早くレバーを握ってください」という実験を行っている。
これなら簡単だ。
だって、ただレバーを握るだけだからね。
人間は、正確な機械ではないから、レバーを毎回一定の力で握ることはできないよね。
さっきは強めに握ってしまったけれど、今回はちょっと軽めの力だったとか、そういうバラツキが自然にできる。
わざと握力を変えているわけではない。
本人はいつも同じように握っているつもりだけれど、強く握ってしまうときと弱く握ってしまうときがある。
では、その握力の強弱は、何によって決まるのか、というのがこの論文の問い。
結論から言うと、それは「脳のゆらぎ」で決まる。
→ ゆらぎ、が準備している?
そうとも言える。
つまり、ランプを点灯した瞬間、あるいはその直前の脳の状態をMRIで測定すれば、次に強く握るか、弱く握るかがわかるっていうわけだ。
先ほど映像で見てもらったように、脳の回路はゆらいでいる。
あんなにも脳回路の活動状態がゆらいでいたら、どのタイミングで情報が入って来るかによって、出力が変わってしまっても不思議ではない。
そういうことが実際に起こるんだ。
いいかな、よく見てね。
これは僕らの行った実験データだ。
先ほどの映像で撮影した海馬ニューロン群に、刺激を与えてみよう。
海馬回路の入り口の繊維に電気刺激を与える。
すると海馬回路で素早い計算がなされて演算結果が出力される。
この出力パターンを示したのがこの図だ。
白と黒で示されている〇が、ひとつひとつのニューロンだね。
この中で、黒丸のニューロンが、刺激に反応して活動したニューロンだ。
つまり入力に応じてピカッと光ったニューロン。
一方、白丸は反応しなかったニューロン。
つまり、黒丸の空間パターンが海馬回路の「計算結果」だと思ってもらってよい。
さて、ここからが重要。
このデータは一回の刺激応答の結果だ。
そこで、同じ入力刺激をこの回路に再び与えたら、
今度はどんな反応が返ってくるだろうか。
答えはこうなる。
別のニューロンの組み合わせが活動するんだ。
回路に入ってくる情報はまったく同じだけれど、計算の結果が異なる。
よく比べてみて、パターンが違うでしょ。
刺激をもっと繰り返そうか。
3回目の応答はこれ。
4回目はこれ。5回目はこれ。。。。
こんな具合で、同じ刺激、同じ神経回路なのに、まったく違う計算結果が返ってきてしまう。
これこそが脳回路の本質なんだ。
コンピュータではそんなことないよね。
気まぐれで計算結果が変わってしまうようなコンピュータなんか要らないよね。
でも、脳はいつでも同じように反応するとは限らない。
その非定常さ、一定じゃないことの原因は。。。
→ ゆらぎ。
そう、回路の内部には自発活動があって、回路状態がふらふらとゆらいでいる。
そして「入力」刺激を受けた回路は、その瞬間の「ゆらぎ」を取り込みつつ、「出力」している。
つまり、
入力 + ゆらぎ = 出力
という計算を行うのが脳なんだ。
となると「いつ入力が来るか」が、ものすごく大切だとも言える。
なぜなら、その瞬間のゆらぎによって応答が決まってしまうから。
結局、脳回路の計算はタイミングの問題になってくる。
逆に、今の時点の「ゆらぎ」がわかれば、出力を予測できるとも言える。
ここで先ほどの実験に戻ろう。
レバーを握ろうと思ったときに、強く握るか弱く握るかがどのように決まるかという話。
今はもっとすっきりと理解できるでしょ。
これは本人の意図の問題ではない。
「いつ押すか」というタイミングで決まる。
つまり、「握れ」というランプが点灯するタイミングだ。
だから、そのときの脳の活動状態がわかれば、握力の強さが予測できる。
→ そのとき、って言っても、予測するってことはランプが光る前の脳の状態ってことですよね?
うん、そうだね。
2秒から3秒前の脳の様子を見れば予測できる。
同じようにゴルフパットの実験についても、もう理解できるよね。
プレイヤー本人はいつも同じように打っているつもりかもしれないけど、外してしまうことがある。
その成否は何で決まるか。
そう、これもパッティングを開始する瞬間、あるいはその直前の脳の「状態」で決まる。
この論文を書いた研究者は、脳の前の方、つまり、前頭葉のゆらぎを見ていれば予測できると言っている。
さらにすごいのはね、ホールに「入る」か「入らない」かだけではなくて、外したときには、どのくらい外すか、つまり、ホールまでの距離さえも予測できるというんだ。
よく考えると怖い話だね。
プレイヤーはいつも通り真剣にプレイしているのに、脳研究者は「あらら、気の毒に。17センチショートするね」などと、スイングを始める直前には、もう言い当ててしまうんだから。
以上の話はすべて身体の動き、つまり筋肉運動の話だ。
では、もっと内面のレベル、たとえば知覚や認知はどうだろうか。
実は、これについても研究が進んでいて、おもしろい例としては、こういう実験がある。
「ルビンの壺」というトリックアートは知っているかな。
顔と壺の像が入れ替わる絵。
黒い模様に注目するとふたつの顔が向かい合っているように見えるけれど、白い図形に注意を向けると壺に見える。
このように、2通りの解釈が可能なイラストだ。
こうしたトリック図のおもしろい点は、ずっと顔に見え続けることも、ずっと壺に見え続けることもないというところだ。
時間が経つと自然に入れ替わる。
これもおそらく脳がゆらいでいるからだろうね。
ただし、ここで紹介したい実験は、そういう絵の入れ替わりではなくて、一回だけ見せるという実験だ。
つまり、一目眺めたときに、まずどちらの絵が心に浮かんだかを問う。
ちなみに、先ほどこの図形を君らに見せたとき、はじめにどちらが見えた?
はい、顔だった人。。。。壺だった人。。。
うん、だいたい半々だね。
実はね、これも君らの脳をMRIで測定しておけば、どちらの絵に見えるかを予測できるんだ。
「お、今見せたら、顔に見えるはずだぞ」とね。
これも2~3秒くらい前には十分に言い当てられる。
僕らの知覚は、見えている情報だけで決定されるのはなくて、内部のゆらぎの状態も強く反映されている。
そういう話だ。わかるよね。
→ 見たいように見れるんじゃないんですね。
「モノを見る」と一口にいうけれど、別に、網膜に届く「光」の物理的性質によって、モノの見え方が決まるわけではない。
その光をどう解釈するかは、僕らの脳の問題だ。
楽しいときと落ち込んだときでは、同じ風景を眺めても、「見え方」が違うように、脳の内面がモノの「見え方」を規定するということだ。
この話はさらに展開する。
「運動」や「知覚」だけではなくて、「記憶」にもゆらぎが関係しているようなんだ。
つまり、覚えられるかどうかも、覚えようとしているときの脳のゆらぎを見ておけば、後で思い出せるかどうかが予測できる。
覚えるべき内容の難易度ではなくて、脳のゆらぎが、記憶できるかどうかを決めてしまうというわけだ。
さらに「注意力」もゆらぎだということがわかってきた。
たとえば、こんな実験だ。
ネズミの部屋にランプがついている。
ランプが点灯するとエサが出る。
そういう仕掛け部屋で育ったネズミは、ランプが点灯すると、そちらに視線をやって、ランプが点灯したのを確認するようになる。
ときにはランプがついたことに気づかないこともある。
注意がそちらに向かないってことだ。
注意力はかなり高度な能力だ。
特定の対象に意識を向けて、さらに、それを持続させて、気づくことができたかという問題だからね。
これもランプがつく前に、脳のゆらぎで決まっている。
ただ、この実験のおもしろさは、MRIで脳の反応を見るという大ざっぱな方法ではなくて、前頭葉のアセチルコリンという神経伝達物質に絞って、その反応を観察したことにある。
ネズミだからこそ、そういう詳細な実験が可能になるのだけれど、そうして細部をきちんと調べてみると、ランプ点灯に気づくかどうかが、なんと20秒も前から予測できることがわかった。
この研究を受けて、ヒトでも注意力の実験が行われている。
単純作業を繰り返していると、僕らヒトは、ときどきミスすることがある。
気をつけていても、うっかりミスしてしまう。
そうしたミスが「いつ起こるか」を脳の活動から事前に予測できるのではないか、というのが研究の目的だ。
もし予測できれば、医療事故や交通事故などの人為ミスを未然に防ぐことができるかもしれない。
実際にしらべてみると、やはり有意に予測できることがわかった。
作業ミスが出てしまうよりもだいたい6秒前、早い場合には30秒前にはわかるというから驚きだ。
というか、単調作業をしているときに、突然に警告装置が鳴って、「君は30秒後にミスをする」なんて喚起されたら、どんな気分なんだろうね。
→ 認めたくない。
あはは。
もはや、怖さを超えて、あきれてきた?
「俺たちの心って一体どうなっているんだあ・・・」と叫びたい気持ちになってくる。
ちなみに、こうした研究は最近とくに盛んで、ここ半年ぐらいの間にも、ワクワクするような論文がたくさん発表されている。
これからどんなふうに研究が展開していくのか目が離せない。
まさにホットな研究分野だ。』
(単純な脳、複雑な「私」 池谷裕二)
脳は、常に自発的に活動しており、脳内では常に「ゆらぎ」が生じていて、
その「ゆらぎ」によって、脳から出力される情報は影響を受けており、
すべての現われ(運動、感覚、記憶、気づき。。。など)が決定する、ということになりますね。
行動ばかりではなく、感覚や思考、心の働きなども、本人の自由意志ではなく、脳のゆらぎがすべてを決定している、ということになりそうですね。
次回も、この続きを見ていきたいと思います。
解脱への正規の方法を修行し
感覚の統御に努力する人は
至上者(かみ)の恩寵(めぐみ)をいただいて
あらゆる愛着と嫌悪から解放される
(バガヴァッド・ギーター第2章64)